必殺仕置人の感想
「仕置人」は、観音長屋の「棺桶の錠」が話しを持ってきた、処刑人の入れ替え殺人のうらみを晴らすことから、中村主水(同心)、念仏の鉄(骨接ぎ師)、棺桶の錠(棺桶屋)、おひろめの半次(瓦版屋)、鉄砲玉のおきん(スリ)の5人が集まり、毎回のさばる悪人を仕置きして行く物語である。まさか、この錠が持ってきた事件をきっかけに、数十年にわたる中村主水シリーズが始まるとは、その時点では誰が気付いていただだろうか。「必殺仕置人」の登場人物の個性は実に確立できていた。中村主水は、嫁と姑にいびられる昼行灯だが、剣はめっぽう強く仕置人の顔は別である。鉄は、酒と女に溺れるその日暮らしの豪快な面がある一方、人の話しを真剣に聞く程人情深いと思えば、殺しにはクールである。錠は、琉球育ちで気性が荒く字も読めないが、正義感が強く人に優しい。半次、おきんも、しっかりと脇を固め、1つの組織として出来上がっていた。また、牢名主、天神の小六も仲間であり、小六だけは、主水の本当の力を見抜いている設定がまた素晴らしい。個性的と言えば特に「念仏の鉄」。山崎努の演じたこの鉄は、声、人柄、動き、全てに憧れる男子が多かったのではないだろうか。「仕置人」以降、必殺シリーズにおいて、短髪は豪快な男が出ていたのは、恐らく鉄の名残りであり、それでも鉄は超えられず、結局「新必殺仕置人」にて山崎努はシリーズ再登場果たしている。その後もシリーズには短髪は豪快な男は登場するが、鉄を超える人物はいただろうか。なかなか難しいのではなかっただろうか。その1つの例として「ぱちんこ必殺仕事人」にも仕事人ではないのに念仏の鉄は登場し続けている。
「必殺仕置人」は1話ずつ完結であるが、1話完結であるがゆえに発生するドラマの矛盾点もほとんどなかったのではないだろうか。脚本や監督も、登場人物の個性が強いほど、安心してドラマを作って行けたのではないかと考える。また、最終回に誰も亡くなっていないのも、再結成があるのでは、との希望が持てる作品であった。平尾昌晃の作曲による音楽も軽快であった。シリーズ共通して、裏家業の殺しの際には、エンディング曲の歌なしバージョンが流れるが、「仕置人」に限り、もう1つ別の曲が用意されていたのも興味深い。
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